方針の落とし込み方

企業理念は「ヒューマンヘルスケア」と言えばあの企業ですよね。

そうです「エーザイ」です。

この会社は定款で会社の目的を定義しています「ヒューマンヘルスケア」と。

この事は株主総会で承認されています。すごい事だと思いませんか?

利益を上げる事を目的にしなければ株主は投資を回収できなくなるかもしれません。

その会社の目的が「患者様とその家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもとヒューマンヘルスケア企業をめざす」としているのです。

エーザイは理念経営を実践している企業なんです。

ではどうやって理念経営を実践しているのか?

理念を掲げて、運営している会社は多いいかもしれません。

経営の世界ではそれが今のトレンドだったりします。

しかし、実際に社員が何をすれば良いのかが浸透されている会社は少ないと思います。

方針がしっかりと落とし込まれていますか?と聞かれて即座に手が上がる経営者は非常に少ないと思います。

もちろんエーザイも昔はそうだったのです。

ヒューマンヘルスケア活動を具体的に行う事は示す事が出来なかったのです。

社長の内藤氏はどうすれば社員たちに企業理念を理解してもらい、それに則した行動を実際に起こしてもらえるのかを考えました。

そんな時にある本に出会いました。「知識創造企業」という本です。日本のナレッジマネジメントの第一人者である野中郁次郎氏(現一橋大学名誉教授)の書いた本なのですが、内藤氏はすぐに自社に来ていただき、レクチャーを受けたのでした。

※ナレッジマネジメント→個人のもつ暗黙知を形式知に変換することにより、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法(ウィキペディアより)

野中氏の提唱しているSECIモデルについては詳しくふれませんが、(興味のある方は是非目を通してみてもらいたいと思います)そのモデルとは暗黙知を4つのサイクルを経る事でより大きな形式知とする事を示しているのです。

暗黙知とは言葉で説明出来ない事柄の事です。

(長島茂雄さんのヒットを打つコツを聞いた時の答えがそれにあたると思います。)

エーザイはそれらを社内に取り入れました。つまりこういう事です。(非常に簡単に記載します)

病院等の現場で患者さんや家族と過ごし、その経験から何かを感じ取る。その何かの事が暗黙知です。そしてそれらを会社に持ち帰り、口に出して説明する。感じ取った事を言葉や図表にし、形式知とします。それらを色々な人と共有(自社内の他部署の方)し、具体的な製品やサービスを開発する。そしてさらにそれらを現場で提示し、患者さんの反応からまた何かを感じ取り暗黙知を集積するというサイクルを回していく活動を実践しています。

いかがでしょうか?

ご自分がエーザイの社員だったら、どのように理念に基づいて行動すれば良いかわかりませんか?

私は非常にわかりやすく感じます。

理念経営をする際にはこういった具体的な行動までも社内に浸透させなければなりません。

理念は掲げているが社員がなかなかそのように行動してくれないと言う事は良く耳にしますが、そういったケースでは行動レベルまでしっかりマネジメントされていない事が多いい様です。

是非自社の取り組みを見直す時間をお持ちください。

現在エーザイが取り組んでいるプロジェクトは40億円規模(ロンドン宣言に基づく)だそうですが、これらは熱帯病を治す薬を「価格ゼロ」で提供する事を目指しています。この薬を使用するであろう発展途上国に中間所得層を作り出せば、将来はエーザイのブランド医薬品をしっかり購入いただけるという考え方にたっています。

この壮大なプロジェクトもきっとエーザイの理念経営が後押しするものと思います。

これからも期待していきたいですね。

今回は事例で方針(理念)を具体的に落とし込むを取り上げてみました。明日は暗黙知経営について書いていきま~す。